今回は介護職になって成長できたこと、介護職で働いたからこそ気づけた事を記事にします。今から介護職になりたいと思っている方、介護に興味がある方に、お役に立てたら嬉しいです。
にっこりあいさつ
「え~挨拶なんてできるよ~」と思ったかもしれませんが、自分の挨拶振り返ってみてください。職場で、家庭で、にっこり元気よく「おはようございます」って出来ていますか?振り返ると意外に出来ていない方多いと思います・・
施設では出勤した時に自分の担当部署の利用者様一人一人に挨拶します。私は、25歳の時に介護職になりました。入職時一番最初に学んだのが挨拶でした。教育係の先輩から「サービス業でお客様に挨拶しないとこってないですよね?利用者様もお客様です。」「立ち止まって、相手の目を見て、笑顔でにっこり」だよと教わったのを覚えています。
それから、先輩から挨拶の度に「立ち止まってない!」とか「笑顔が足りない!」って習慣になるまで言われ続けました。入職して2ヶ月ぐらいした時、先輩から「挨拶完璧じゃ~ん」って言われました。最初は意識していましたが、習慣になれば自然と出来ていました。
挨拶が出来るようになってからは、利用者様からも「あなたの挨拶は気持ちがいいね」って言われました。うれしくなると余計笑顔になります。私は人見知りなのですが、職員の方とも打ち解けるのが早い気がしました。
プライベートでも「最近笑顔が増えたね」って言われました。挨拶って何気なく意識せずにされている方が多いと思います。だからこそ、挨拶を変えるだけで変わることって多いかもしれません。もしかしたら人生を変える力があるかもしれません。介護職になって素敵な挨拶しませんか。
人は思い通りに動かない
介護施設では、利用者様が生活する一日の流れがあります。例えば10時にお茶の水分補給。11時30分にお昼ご飯前のトイレ誘導。午前中に入浴。というような感じでだいたいの流れが決まってます。それに沿って職員も、利用者様に「お茶ですよ」とか「トイレ行きましょうか?」と声掛けを行います。
ここで起きるのが、拒否です。「私はご飯食べません。」とか「トイレに行きたくありません。」など断られます。職員もあの手この手使いながら必死に説得します。時間が遅れて流れが変わるとバタバタするのが分かっているからです。
職員も人間なので感情があります。拒否があり、何回も声掛けしているとイライラしてきます。イライラすると声が大きくなります。声が大きくなると、利用者様も人間なので感じ取ります。余計に拒否してしまうのです。そして、苦情やトラブルの元になります。
私も利用者様の拒否に困ったことがあり、先輩に相談したことがあります。「どうしたら、利用者さんを説得できますか?」「どうしたら言うこと聞いてもらえますか?」と聞きました。先輩は「俺はこう考えているよ」「まず、利用者様は説得できなし、思い通りに動かない」「思い通りに動かそうする時点で間違いじゃないかなあ」と言われました。
もし、自分が嫌だと拒否している事に、他人から説得されて言う事聞くかなって思った時に・・「素直に聞かないな」って思いました。そして私は「人は思い通りには動かない」と決めつけました。そこから利用者様から断られても「しょうがない」って思えるようになりました。「また、ちょっとしてから話してみよ。」と割り切ることができました。
「しょうがない」って割り切ることで、仕事に対しても、家庭の育児に対しても楽になりました。一生懸命伝えることだけがいいことだけじゃない。割り切ることも大事だと。介護は人生も学べます。人と人が繋がる仕事だからです。
気持ちの余裕
介護職で一日働いていると本当にバタバタです。お茶を飲む暇もない。休憩しながら介助します。マラソンしているみたいです。利用者様とゆっくり話をする暇もないくらい。そして疲れてくるとイライラします。
自分が介護主任になってすぐの事でした。主任になれたことで嬉しかったこともあり、絶対いい施設にして見せると熱くなっていました。今考えると周りが見えてなかったんです。ミスする職員がいれば、厳しく注意しました。人の意見も聞きませんでした。いつもイライラしていました。
施設内の雰囲気も悪くなり、職員同士の人間関係も悪くなります。そうなると介護の質も悪くなります。介護の質が悪くなると介護事故が増えます。悪循環の施設の出来上がりです。それでも、私はこんなに頑張っているのにと。全くわかっていませんでした。
自分が雰囲気を悪くしたことも。人間関係を悪くしたのも。気づいたのは利用者様の言葉でした。「あなた何をそんなにイライラしているの?」って言われました。その時ようやく気付いたんです。イライラしているんだと。やっと振り返ることが出来ました。
人は余裕がある時にしか他人に優しく出来ない。余裕がない時は、自分の事しか考えられない。自分の事しか考えられないから周りとも上手くいかない。自分に足りないものは気持ちの余裕だと気づきました。
介護だけじゃありません。日常でも、夫婦でも、子供との関りでも。気持ちの余裕がなければ自分以外の人にやさしく出来ません。自分にも優しく出来ていませんでした。それから今でもですが、いつも自分に言い聞かせています。「余裕」「余裕」「大丈夫だよ」
介護職になって人生で一番大事なことを教えて頂きました。そして介護のお陰で人として成長できたと思っています。一緒に介護で成長しませんか。
楽しむこと
介護職として20年携わって何人の利用者さまと出会ってきたか数え切れません。利用者様とお茶の時や、部屋などでお話をします。若いころどんな仕事をしたか、戦争の話だったり、人生のアドバイスだったりです。
その中で、「人生はあっという間だよ。楽しみなさい。」とよく言われてました。何か後悔しているような言い方でした。ある時も同じことを言われ聞いてみました。「何か後悔しているんですか?」と。その方は好きな人がいたけど思いを伝えられなかったと。
戦争があったからしょうがなかったけど、もっとチャレンジしとけばよかったと言われました。「人生は自分次第ですよ」って言われました。その言葉を言われてから私は、人生について考えるようになりました。
「どう生きるか。」そんな簡単に答えが出る事ではありません。私は楽しむことを人生の目標にしました。仕事を笑顔で楽しみました。本を読んだり、新しい趣味に挑戦したり、彼女も作りました。利用者様とのちょっとした会話で気づかしていただいたことがいっぱいあります。
もしかしたら、親より人生を教えて頂いたかもしれません。介護職で働いていたからこそ今、楽しい人生を送れています。介護職でしか得られないことがいっぱいあります。介護は素敵です。
感動できます
介護施設では、利用者様一人一人に介護職員の担当者がつきます。担当者の業務内容は、物品を購入する時の家族への許可をもらいます。ケアプランの評価、看護師と現在の治療中のケガや病気の評価、誕生日や行事の計画などです。
その中でも自分の働いていた施設では、誕生日の行事に力を入れてました。一年に一回の誕生日に利用者様の希望を聞きます。今何がしたいか。何が食べたいか。どこに行きたいか。可能な限り今の夢を叶えてあげる。
私が介護職の頃、担当の利用者様のお話です。90歳で車椅子の女性の利用者様でした。他の担当者と同様誕生日の聞き取りを行いました。「○○さん誕生日何がしたいですが?どこか行きたいところありますか?」と聞きました。
即答で担当の利用者様は「私は夫の墓参りに行きたいのよ~」と言われました。びっくりして「墓参り?」と聞き直しました。今までの方は、寿司が食べたいとか、買い物に行きたいとか、海が見たいとかでしたが、墓参りは初めてでした。
もう一度「墓参りでいいんですね?」と聞くと「よろしくお願いします」と言われました。ご家族に連絡しました。本人さんが墓参りに行きたいと希望していること。墓参りに行く許可をもらいました。お墓の場所も聞きました。
ご家族の方も同行したいとのことでしたので、同行して頂きました。当日、墓の道は狭く、車いすが通らない幅でした。職員二人がかりで車椅子を持ち上げお墓の前までお連れしました。ご家族が線香に火をつけ利用者様に渡しました。
線香をあげました。手を合わせた時ににっこり笑った後、お墓を見て「お父さんやっと会えました。」「今まで来れなくてごめんなさい」と言われながら、ぽろぽろと大粒の涙を流されました。「さみしい想いをさせてごめんなさい」と泣きながら。
それを見ていた家族も、私たち職員二人も涙が止まりませんでした。私も唇を嚙みながら必死に我慢してましたが止まりません。私たち職員二人は鼻水までダラダラ流しながら。男性二人だったので、ティッシュもハンカチも持っていませんでした。
ご家族と利用者様は、はっと自分たちを見て大の男二人が鼻水をダラダラ流しながら泣いているのを見て爆笑でした。「なんであなたたちがそんな泣いてるの~って」ゲラゲラ笑いながら。お墓でこんなに笑い声が響き渡ることはないと思うぐらいに。大きな声で。
人に喜ばれると楽しくなり、嬉しくなります。介護は、利用者様も職員もリアルなドラマみたいなんです。嫌なイメージを持っている方が多いかもしれません。ですが、リアルだからこそ涙もあり、楽しさもあり、悩みもあります。介護は気づかせてくれる仕事です。感動を。
今、幸せを感じられます
介護職は利用者様の隣に座って一緒にお茶を飲んだり、お菓子を食べたり、話をします。それも仕事です。もしかしたら一番大事な仕事かもしれません。話をすると利用者様の昔話になります。戦争の話だったり、若い頃の仕事の話だったりします。
利用者様との何気ない話が一番楽しい時間でホット出来る時です。今では体験できない貴重な話が多いです。ある女性の利用者様と話をしていた時です。「あなたは結婚しているの?」と聞かれ、「はい、来月結婚式です」と答えました。「まあ、めでたいわね。おめでとう」と言われました。
続けて「恋愛結婚?」と聞かれ「そうですよ」と答えました。「あら、いいわね~」と言われました。「○○さんは恋愛じゃなかったのですか?」というと、「昔はね~恋愛結婚なんてほとんどなかったわ、親が決めた結婚よ」と言われました。
その利用者様は大好きな方がいて、お互い一緒になろうと約束していた人がいました。ですが、親から告げられたのは違う方との結婚でした。泣きながら訴えましたがダメでした。当時親が決めたことは絶対だったので、好きでもない方と結婚しました。
そして大好きだった方は戦争で亡くなったと聞いたそうです。「それでも、私は幸せでした。夫には大事にされたし、子供にも恵まれましたから」「でも今だったらね~」と、それ以上は言いませんでしたが、「あの方と結婚出来ていれば」と言いたかったんだと思います。
「好きな人を大事にしなさいよ」と言われました。今この時代は結婚するか、しないかも選べます。どの人と結婚したいかも選べます。どこで暮らすか、どこで働くかも選べます。今は選択の自由があります。それが気づけただけでも幸せだと思いました。介護は気づかせてくれる仕事です。今が幸せだと。
時間は大事
介護施設では利用者様が入れ替わり入ってきます。部屋が空くときは、利用者様がお亡くなりになった時か、病院に入院して施設に帰ってこれなくなった時です。悲しんでいる暇もありません。部屋を開けていると施設にお金が入って来ません。
どこの施設も1週間から10日で新しい利用者様を見つけ入所させなくてはなりません。上司から言われます。「早く入所させなさい」と。年間多くて10人以上の方がお亡くなりになります。現在は施設での看取り(施設で亡くなられる最後までケアをします)が多いです。
理由としては、住み慣れた施設で静かに最後を過ごしてほしい。心臓マッサージや、延命治療を行って苦しめたくない。この二つの理由が多いです。看取りが多くなってから介護職員が死と向き合うことが多くなってきました。
人が死と向き合う事ってそんなに何回もありません。自分の親、祖父、祖母、親戚ぐらいではないでしょうか。私は20年介護に携わり、100人以上の死と向き合ってきました。体が冷たくなっていく、体が硬直していく、人があまり経験しないことを経験してみて思うことがあります。
人が健康で元気で暮らせる時間はあまりないんだ。なんでも出来る時間って限られているんだ。時間は無駄にしてはいけないんだと気づかせて頂きました。介護職をしていなければ、死と向き合っていなければ気づいていなかったかもしれません。介護は気づかせてくれる仕事です。時間は大事だと。
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